ヒット・アルバムの作り方

ヒット・アルバムの作り方

「どうすれば自作音楽をヒットさせられるのか……?」 誰でも音楽リリースができる昨今、これはプロに限った悩みではないでしょう。

情報限は、もう何十年も前の話。一等地青山のあたりに、「流行音楽委員会」的な会社がありました。そこで聞いたヒット・アルバムの作り方がすごかった!

微細な分析と研究に基づいた理論は、レコード会社や音楽事務所のコンサルティング事業用に開発されたもの。当時のレコード文化からストリーミング/サブスクに移行してきた現在でも、十分通用します。

既にアルバムを作っている方にも、これから作る予定の方にも……。今日は私の実践例も含めて、ポイントのカケラをシェア致します。

ベスト・アルバムがつまらない理由

珠玉の名曲がぎゅっと詰まったベスト盤。つい手が伸びますが、聴いてがっかりしたことはありませんか?

曲順を熟考して作られたオリジナル・アルバムに比べると、流れに欠けますよね。

ピンク・フロイド(伝説的な英プログレッシブ・ロックグループ)が、一曲バラ売りをするストリーミング・サービスを非難して訴訟を起こした所以です。

クオリティの高いユニーク曲ばかり並べても、名アルバムにはなり難い――これがヒットの大前提です。

デザイナーのブティックで当たり前に取られている店舗ディスプレイ策は、シンプルな白シャツなどベイシックなアイテムを適度に配置して、今季の推しデザインを引き立たせること。

私みたいに無名の新人としてアルバム・リリースをする場合、「自信作を貯めてから」と考えがち。ですが、その戦略は疑ってみたほうがいいです。

名アルバムに共通の”スーパー・トラック”の数

ズバリ、4〜5曲とのことでした。愛聴のアルバムをちょっと思い浮かべれば、容易に納得できるのでは?

私の思いつくところでは、イーグルスの”ホテル・カリフォルニア”とか……。リサ・ローブの”テイルズ”とか、エイミー・ワインハウスの”Back To Black”とか(古い?w)

要は緩急が大切――流れを考えつつバランス良くキラー曲を配分することが、ヒット・アルバムの共通要素だそうです。ストリーミング全盛で今やCDを買う人が少数派な欧米でも、この要素は未だに真理。

一方、サブスクのキュレーター(選曲者)にアピールするには、アルバムの最初に自信作を集中……とも一部では言われます。

短期的には、それもアリかも。でも息長く自作を気に入ってもらいたいなら、どうなんでしょう? 最初のほうだけがステキ、なんて、関心を持って下さる方にとって親切ではない……と、私は感じます。

サブスクなどでビッグネーム・プレイリストに選ばれるには

アメリカでは、オーディションの審査員やプロデューサーは最初の5秒しか聞かない、と一般的に言われます。たいていのアーティストは、これを踏まえて制作をしているよう。

ただしアリアナ・グランデのチームは、このストリーミング時代に逆行し、推し曲をアルバム最後に配する戦略で成功を収めてきました。

私の1st アルバムの例でも、Apple Musicの公式プレイリストとかNaxos(クラシックCD売上世界No.1レーベル)選曲のプレイリスト、米第2位の公共放送APMデジタルラジオに選ばれた曲のアルバム内曲順は――

3曲目、5曲目、8曲目、10曲目です。(全15曲)

つまり、選者はポッと出の新人についても10曲目くらいまでは聴く可能性がある、ということ。問題は、私の推し曲はラスト2だったので、課題は残りますが……! (自分がアリアナ・グランデではないことを自覚しないとw)

他のアーティストさんを見ても、アルバムの1〜2曲目がプレイリストに選ばれている、という方が稀。「次はどんな曲なんだろう?」と選者やリスナーさんに思われるアルバムづくりが良さそうです。お気に入りのアルバムを参考に、ぜひチャレンジしてみてください。

まとめ〜聖子ちゃんの人気のヒミツも”アルバムづくり”

昭和からの長きにわたり、何かと話題を提供してくれるセレブ、松田聖子さん。アイドル全盛時代にデビューした彼女が、同期を遥かに引き離したロングラン人気のヒミツとは?

No.1ヒット・シングルを連発していた当時から語られていた理由は、そのアルバムのクオリティにあります。

学ぶところの多いつんくさんのこちらの記事中にも資料記載がある作曲家さんクラスの、稀代のヒット・メイカー陣を惜しみなく起用。芸術における、「天才、プロ、アマチュアじゃんけん」の法則。https://note.com/embed/notes/nc9559c0f5938

通常のアイドルは、ヒット曲1〜2曲の他には光るトラックがないアルバムづくりで、当人の人気に頼ったセールスが定石だった時代のことです。シングルでファンになった人たちを、完成度の高いアルバムが惹きつけて離さない独自戦略――画期的でした。

私も当時から聖子さんのアルバムの多くを愛聴。ニューヨークを活動拠点にした今でも、こちらのアルバム曲”マンハッタンでブレックファスト”を目覚ましのアラーム音に設定しています。

誰でもカンタンにアルバム・リリースができる時代とはいえ、幾多のDTMライバルから抜きん出るには必勝策略が欲しいところ。今日の投稿を頭の片隅にでも置いていただけたら嬉しいです。

あとがき〜つんくさんのこと

先に引用させていただいたつんくさんの記事は、アメリカの音楽業界でも同じく通用する法則に見えます。

私が’90年代に日本で担当していた女性歌手が、シャ乱Qさんと同じライブハウスに、同じ月に出演しました(ウォーターフロント”インクスティック鈴江ファクトリー”)。シャ乱Qさんのファンだったので、アーティスト写真が並んで載った月間パンフレットは、今でも大切に取ってあります。

音楽は世界の言葉。日本の昔の歌謡曲がストリーミングの世界市場でいきなりヒットするこのグローバル時代に、音楽やるなら世界を目指すのもいいかも!

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